---【こちらの記事もご覧ください】
「次世代の出版業界」予想図 <その1>
「次世代の出版業界」予想図 <その2>
「次世代の出版業界」予想図 <その3>

■反響が大きかった記事まとめ
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---【2016年4月24日・追記】---
こちらの記事を書いてから早いもので、もう5年経ちました。
今読んでみて、概ね正しいことを書いているなと思うのですが、
考え方が変わった部分、新たに加わった部分などもあります。

そのあたりを、しっかりまとめたいと思っているのですが、いつになるか分からないので、
ひとまずは、去年書いた下記の記事も参照にしていただけたらと思います。
明治大学で講義してきました:「100万人から1円」でなく「1万円出してくれる人を100人」へ
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iPhone、iPadを持っての初めての海外旅行に行ってきました。

いつも海外旅行に行くたびに一気に本を読むので、たくさんの本と、
そして、iPhone・iPadに電子書籍を詰め込んで。

でも、結果から言うと、電子書籍、まったく読みませんでした。

本はいつもの旅同様、よく読みました。
iPhoneも頻繁に眺めていました。


でも、電子書籍は読まない。

iPhoneで何をしていたかと言うと、
wifiが繋がるところではTwitterとfacebook。
繋がらないところではRSSリーダーでブログチェック。

次々と更新される面白い情報があるのに、
なんでわざわざ電子書籍なんて読まないといけないの、
それが正直な感想です。

じっくりと腰を落ち着かせて読むのなら、紙の本のほうが心地いい。


本はやはり紙の本が、デバイスとして最適だと再確認した海外旅行でした。

残念ながら、やはり電子書籍はたいした市場にはならないと思います。
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というと、おそらく出てくる反論は以下の二つ。

1.「まだ電子書籍は発展途上。これからもっと進歩すれば、紙の本より快適なものになる」

2.「あなたは紙の本に愛着・慣れがある世代だからだ。紙であることにこだわらない世代は、紙の本が最適とは感じないはずだ」



この意見に対する私の意見。

まず、1.「まだ電子書籍は発展途上。これからもっと進歩すれば、紙の本よりも、快適なものになる」

それは確かにそうなると思います。
でも、そのときに、その中味は「書籍」的なものである必要ってあるのでしょうか?

今回の海外旅行で、紙の本と、iPhoneと、その中に入れた電子書籍、を持ち運び、改めて認識したこと。

・紙の本: 留めた情報
・iPhone: 流れている情報 ※
・電子書籍: 留めた情報

(※ wifiに繋がってる場合は当然ですが、
繋がってないときでも、RSSリーダーに読み込んでおいた情報は、数時間前に更新されたものなので、ほぼ「流れている情報」になります)


今更感のある分類ですが、海外にいて、「メールのやりとりをいつもほどやらない+新聞やテレビから情報を得ない」状況におかれてみると、その差異はより際立ったものになります。

どれだけ電子書籍のインターフェイスが優れようが、技術が進もうが、
同時に、いや、それ以上に、ディバイス自体や他のアプリケーションが格段に進化していく。
「流れている情報」を得られるデバイスで、わざわざ「留めた情報」を得たいとは思いません。

(電子書籍がニコ動的なものになり、「一つの電子書籍コンテンツ上で、読者がコメントを次々と更新していく」ということは考えられますが、そのときでも、基盤は「留めた情報」にあることは変わりありません)

「留めた情報」を得たいときは紙の本でよく、デジタルツールは補助的に使うことになるでしょう。



…と言うと、
2.「あなたは紙の本に愛着・慣れがある世代だからだ。紙であることにこだわらない世代は、紙の本が最適とは感じないはずだ」
という反論が返ってくることが予想されます。

まあ、それはそうかもしれません。

子どもの頃からデジタル機器に慣れ親しんでいて、教科書もタブレットPCだった、なんて層が大人になると、「留めた情報」すらも紙よりiPhone的なもので得たいと思うかもしれません。


でも、そこには根本的な変化を見過ごしてます。

そんな「デジタルネイティブ」が、「留めた情報」なんてものに興味を持つでしょうか? 価値を見出すでしょうか?

今よりももっと「流れている情報」がおびただしい数になる時代において、
「流れている情報」を得ることに慣れ親しみ、長けている人たちが、「留めた情報」をあえて得ようとするのでしょうか。

もちろん、「流れている情報」と「留めた情報」両方にそれぞれの価値があり、両方をバランスよく摂取しないといけないことは、この先も変わりがないでしょう。


でも、そんな面倒なことを真面目にする人は、ごく限られた人で、「デジタルに慣れ親しんでる層」の大多数は、「流れている情報」だけで今以上に充足することは明らかです。
そっちのほうが面白いし、手軽な娯楽ですから。

となると、やはり、「留めた情報」の電子書籍の市場は、たいして大きくならないでしょう。




だらだらと書きましたが、そんなことを踏まえて、「これからの紙の本と、電子書籍」をざっくりまとめてみます。

・「本」「書籍」としては、紙がメインであることはこれからも変わらない。

(ただ、漫画はちょっと上の論点とは異なるので、単純な数値での市場規模はデジタルと紙の本が拮抗する日がくる可能性も十分にあります。が、そのあたりを書き始めるととりとめがなくなるので、ここではいわゆる「書籍」的なものに限ります)

・でも、そうはいっても、紙の本の市場規模は減っていく。
紙の本に慣れ親しんでいた層の私が、今回の旅先で、いつもなら本に割り当てられていた時間のかなりの割合が、iPhoneに向う時間に置き換えられていたことが示すように。
そして、紙の本に慣れ親しんでいる層の数は着々と減っていく。

・電子書籍の市場規模は少しずつは伸びていく。
「留めた情報」もデジタルでいいという層は少しずつ増えていくから。

でも、
・電子書籍の市場拡大が、紙の本の市場減少を補うことにはならない。

紙の本の市場は着実に減っていく。
電子書籍の市場は微増。

しかも、その微増しかしない電子書籍市場において、出版社は、紙の本市場ほど優位に戦えない。


さて、出版社はどうしたらいいのでしょう。

それについて考えていることも多々あるのですが、それはまた改めて、どこかで。


確実に言えること。

目の前の仕事に忙殺されて(自ら、して)近視眼になっている状況を変えること。
そのためにも、
「編集者がすべきこと」「出版社がすべきこと」として当たり前になっていることを疑ってみること。

まずは、そこからです。

それなしに、
出版社持つ強みを見出すことは絶対にできません。


時間は本当に残ってないですよ。


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