前回のエントリ「希望は、乏しいです。:「電子書籍のこれから」を、まとめてみました」は、いつもより多くの方に読んでもらえ、いろんな方から意見やコメントをもらえました。

おおむね賛同の意見でしたが、一方で、うまく伝えられてなかったところもあったようです。

たとえば、こんなご意見。

『確かに書籍は現状では過去の情報や考えをまとめた物でTwitter等は現在進行形かもしれませんが、その考え方自体が変化していくのでは?例えば書籍の一部に読者との意見交換を含めたり、もっといえば小説の続きを読者が作ったりなど』

私が「電子書籍」と、ざっくりとひとまとめにしてしまったせいだと思うのですが、この方がおっしゃる「電子書籍」は、私が先のエントリで書いたところの「流れている情報」です。

電子書籍においても、
・流れている情報
・留めた情報
の二種類は、当然ながら存在します。

私が先のエントリで「希望は乏しい」と書いたのは、「留めた情報としての電子書籍」です。

別の表現をすれば、
コンテンツを一つ一つパッケージングして別個に販売する
これまでの出版ビジネスの在り方をデジタルに置き換えただけの電子書籍です。
(つまり、現在、今現在、頒布している電子書籍、とりわけ、出版社が出しているものです)



一方で、「流れている情報としての電子書籍」もあります。

それは、まさに上記のご意見にあるような
【サービスとしての電子書籍】
もしくは
【電子書籍を使ったサービス】
です。

たとえば、パブーのようなサイトがこれに当たります。

pixivも広義での【電子書籍を使ったサービス】になるかもしれません。

そのような【電子書籍を使ったサービス】には、私も可能性を感じています。

ただし、
(それゆえに、先のエントリで意識的に含めなかったのですが)
こと、出版界においては、「流れている情報としての電子書籍」に関しても、希望は乏しいと言わざるえないと思います。



「流れている情報としての電子書籍」=【電子書籍を使ったサービス】においても、出版社が厳しいと思う理由は以下の通りです。

▲マネタイズできるようになるまでに長期間を要する。

▲これまでの出版社のやってこなかった種類のサービスになる。

▲さらにいえば、出版社の苦手とする種類のサービスになる。


たとえば、pixivのようなサービスを出版社が展開することは十分考えられると思うのですが、
おそらくそのとき出来上がるものは、ユーザからすると「ちょっとズレてる」ものになるでしょう。

webで受け入れられる微妙な空気感のようなものを身につけられている出版人は、かなり少ないからです。

(注1:
その「微妙な空気感のようなもの」を説明するのは難しいので、逆の例を挙げます。
一時結構見かけた「CanCam」もどきのファッション誌フリーペーパーを、編集者視点で見たときの、あの感覚が「ちょっとズレてる」です。
おそらく、作ってる本人たちは、「私たちだって、CanCamみたいなの作っちゃえるんだぜー」と思ってるのだろうけれど、正直、全然違う。
ああいう感じを、逆に、我々が作るwebに対してはユーザから抱かれているのが現状です)




もちろん、その「webにおける微妙な空気感のようなもの」を身につけられている出版人もいるのですが、
そういう人が力を発揮できる組織形態にはなっていません。

もし万が一、そういう人が様々な障害を乗り越えて、「微妙な空気感のようなもの」を見事に体現したものを作りあげても、リリースまでに確実に横槍が入ります。
さらに、リリース後も、様々な承認作業が必要となります。

ワンクリック増えるだけでユーザがかなり逃げていくwebにおいて、
サービスを運営する内部で承認作業が増えることで、どれだけズレるかは想像に難くありません。

しかも、マネタイズできるまでに時間を要するので、そうした横槍を突っぱねることは非常に難しくなります。

(そう考えると、「組織形態」にスポットを当てた場合、出版界において今現在、一番希望をもてるのはやはり星海社なのかもしれません)


その一方で、
「コンテンツを一つ一つパッケージングして別個に販売する」という「留めた情報としての電子書籍」は

・利益は微々たるものながらも、マネタイズはすぐできる。
・これまで出版社がやってきたことをデジタルに置き換えただけ
・その範囲内においては、出版社の得意分野

という特長があります。

となると、どうなるかは火を見るより明らかです。

でも、そこに希望は乏しいことは先のエントリに書いたとおりです。



…と、
そんなふうに悲観論ばかり並べてたら、また批判されそうなので、今回は少しは具体的な案を提示してみようと思います。

出版社の持つ強み、そして、現状の組織形態を考えると、

「留めた情報としての電子書籍」を活用して、
【電子書籍を使ったサービス】を展開する


というのが、今現在は一番現実的、かつ、建設的だと考えます。

たとえば、「年会費○万円で、新潮新書の電子書籍を好きなだけ読める」といったサービスが、これにあたります。

たいして面白くないですが、現在の出版界においてはかなり画期的なこととして捉えられるでしょうし、小さいながらも確実な一歩となるはずです。



…なんてことを書きつつも、

実は、出版社がpixiv的なサービスを展開する手も十分にあると私は考えています。

上に挙げたような克服が困難な弱点はあるのですが、それでも、それを凌駕するだけの強み・具体的なメリットがあります。

が、それについては、私が今やろうとしていることと多少関係するので、ここには書きません。



最後に…

先のエントリにいただいたコメントに、「出版界に対して悲観的すぎる」というものもありました。

そう思われた気持ちも分からなくないのですが、
現状の問題点や懸念点を徹底的に洗い出して検証する、というプロセスを経ないことには、今の出版界において、真に希望に溢れる企画は生まれないと、私は思っています。

そもそも、私は、具体的なアクションに繋がらない批評を長々と書くような趣味は全くありません。

まだまだここには可能性がある、希望が残されている、そう思うからこそ、リソースを消費するだけのような場当たり的なものには憤りを感じずにはいられないのです。


これだけ延々と書き連ねているのは、悲観論や批判を並び立てたいわけじゃ全然なく、
もっとちゃんと考え抜いて、もっともっと面白いことやろうよ!
そういう思いがあるゆえなんです。

やりましょう。