学校図書館の司書教諭さんや、学校司書さん、図書館担当教諭さんなどが読む真面目な雑誌には似つかわしくない、ちょっと過激なタイトルをつけさせてもらいました。

「図書館だよりなんて誰も読まない」

『学校図書館』2012年12月号(通巻746号)に書かせてもらった原稿です。

発行元の全国学校図書館協議会編集部に許可いただきまして再掲載させてもらうことにしました。

改めて読みなおしてみると、「12歳の文学賞」などを通じて感じていた想いなども詰まっているように思います。

少し長くなりますが、よろしければお読みください。

(こんなエラソーなことを書いてるお前のブログの文章はどんなもんなんだ、
とお叱りを受けそうですが、あくまでこの文章は「紙媒体」について書いたものです。
このブログは、ウェブの空気感とかを実践で学んでみることも目的としてるので、
下記のように練り込んで書いてはいません。
って完全に言い訳になってますが、ご了承ください!!)





1.逃れられない恐ろしい真実

「読まれなかった本は存在しないに等しい」。

出版界にはそんな恐ろしい言葉があります。編集者としては反発したいところですが、決して否定はできません。自分が読者の立場になってみれば明らかなことです。

そして、この残酷な事実は、商業誌に限りません。たとえ学校の掲示物であっても、この運命からは逃れられないのです。どれだけ素晴らしいことを書こうが、読まれなければ、それは「存在しないに等しい」のです。

もしかすると、図書館だよりは商業誌よりも難しいのかもしれません。商業誌は、子どもの手に渡っている以上、誰かしらが興味を持ったことになります。そこには、子ども自身か親か先生か、誰かしらの「読みたい」「読んでほしい」という意志が乗っています。しかし、図書館だよりは、既に「そこにある」もの。読む必要は必ずしもないものです。

商業誌以上に気合を入れて作らないことには誰も読まない、つまり、「存在しない」ことになりかねません。

実際、私の記憶をたどってみると、図書館だよりを読んだ記憶がないんです。編集者になるような人間ですから、子供の頃から本は好きでした。それでも図書館だよりは記憶がない。

それならば、ましてや、本好きでない子ならば……。


2.見出しですべてが決まる

商業誌よりも難しく、「存在しない」危険性が高い。その厳しい現実を踏まえた上で、どうしたらいいでしょうか。

まず見出しに注意をしてみてください。「みんな本を読もう」とか「読書会開催」とか、そのまんま書いてはダメです。ぜひ、通勤電車で雑誌の広告を見てみてください。「みんな選挙に行こう」とか「AKBコンサート開催」なんて見出しは一つもありません。たくさん並んでいる広告の中で自分のところを見てもらうために、どこも必死です。

「安っぽい週刊誌の広告じゃないんだ。学校の掲示物にインパクトなんて必要ない!」そんなふうに思われた方もいるかもしれません。

でも考えてみてください。子どもたちは大忙し。友だち、好きな異性、スポーツ、勉強、ゲーム、漫画、テレビ……気にすることは山ほどあります。そんな中、図書館だよりを読んでもらうのは、もしかすると、電車の広告バトル以上に厳しいかもしれません!

そう。やはり、商業誌より厳しいのです。生半可な見出しでは見向きもされないのです。



3.必中の見出しの付け方

では、忙しい子どもたちの目を引く見出しはどんなふうに作ればいいのでしょうか。基本のポイントは以下です。

・意外性(例:世界に一冊しかない本が入りました)
・時事性(例:新しい校長先生が学生時代に好きだった3冊)
・お得(例:『ONE PIECE』映画を100倍楽しむために観る前に読む本)
・秘密(例:意外に貸出ランク上位の裏情報をこっそり教えます)
・反発(例:この本を読まないから友だちに嫌われる)
・共感(例:本嫌いだった私だからこそ、みんなに伝えたい一冊)
・矛盾(例:秋は読書禁止!)

他にもありますが、まずは上記のどれか(もしくは複数)に当てはめるように考えるといいと思います。(ちなみに、この記事の見出しでは“反発”を使いました。「む? なんだと!」と思わせて、注意を引くという方法です)

そして、見出しの重要さは「目を引く」だけにはとどまりません。見出しが違うと、全く同じ中身でも違って見えてきます。例えば、この文章の見出しが「美人編集者が教えるトキメキテクニック」だったら、違う読感になりませんか? 見出しには、“料理を入れる器”のような役割もあるのです。


4.初めの一行で子どもの心を鷲掴みにする

見出しが決まれば、次は中身です。

中身が先じゃないのか?と思われるかもしれませんが、逆です。見出しというのは、どのような心持ちで読んでほしいか、何を伝えたいか一言でスッと言い表すものです。それを決めずに書き始めるのは、目的地も決めずに旅に出るようなものです。ですから、見出しが決まれば、もう中身は決まったようなものです。となると、「何を書くか」よりも、はるかに大事なことがあるわけです。「どう書くか」です。

導入の一行に、見出しと同じくらいパワーを注いでみてください。見出しで惹きつけたのですから、退屈な一行目で「なんだ、今回もまたつまんなそうだな」なんて思われてしまったらもったいないです。「すっかり冬になりましたね。家で読書するのにぴったりな季節です」なんて、時候の挨拶みたいなものはスッパリ切りましょう。

新人の小説を選考する際、「初めの三行でその作家の実力が分かる」と言われています。出だしで惹きつけられない作品が、何十枚、何百枚も読者を引きつけ続けられるわけがない、というわけです。

小説より圧倒的に分量が少ない図書館だよりの場合ならばなおさらです。無駄に数行を使っている余裕などありません。一行目で、ぐわし!と子どもの心を鷲掴みにしましょう。

「ルフィが大好きな本を入手しました!」このくらいでいきましょう。

え? そんな本が実在するのか、って? 知りません。でも、いいんです。最後に「仲間をなにより大事にするルフィですから、この本もきっと気に入るに違いありません」と付け加えてみれば、ウソにはなりません。

そんなことをしたら生徒からブーイングが来るって?

いいじゃないですか! 文句を言った、その子は、今まで一度も図書館だよりなんて読んだことがなかったはずです。


5.正しいは伝わらない

さて、見出しと導入の一文が決まり、いよいよ本文なわけですが、ここで注意が必要です。
“正しいこと”を書こうとしないことです。

図書だよりを作る側になった立派な大人は、仕事もプライベートもしっかりとした方だけに、大きな勘違いをおかしがちです。「正しいことを伝えれば、いつかきっと伝わる」と。

断言します。伝わりません。

なぜでしょう。答えは簡単です。“正しいこと”は世の中に溢れていて、そして、みんな知っているからです。

「人を殺すことは良くない」そんなことは誰だって知っています。けれど、戦争はなくならない。知らないからじゃないんです。日々の生活において、その“正しいこと”よりも重要なことが、その人にはあるからなのです。


6.その甘さを、子どもは見抜いています

だからといって、「読者ウケだけを狙ったセンセーショナルなことを書くべき」なんて言ってるんじゃないですよ。正しいことを書き続けるべきだと思います。

しかし、他者に何かを伝えようとする立場の人にとって、「正しいことを書く」なんて大前提です。

でも、そこに、「正しいこと書いてあるんですから、読むべきですよ」オーラが漂っていてはいけないんです。名作映画を思い出してみてください。素晴らしいメッセージがあるからこそ、それをいかに物語の中に埋め込むか、それが大事なのです。

「いい本だから読もう」なんて直球な内容じゃダメです。「ゲームばっかりやってないで、いい本を読んだほうがいい」なんて誰でも知っている、でも、ゲームをしたいんです。その子に対して、「この本がどんなに素晴らしいか」を滔々と書いても読むはずがありません。

実は子どもたちは気づいてしまっています。意地でも読ませてやる!という気概が足りていないこと、そして、「こんないいこと書いたんだから読みなさい」と思っている甘さも、全て見透かされているのです。


7.“有名人”の写真を有効活用する


そんな手強い読者の心をどう掴むか。そのとき有効なのが“魅力的な写真”です。本の情報誌『ダ・ヴィンチ』は、人気タレントを表紙にして楽しそうなイメージを作り出しています。有名人の写真はとても効果的ですから、是非活用してください。

「メディア企業でもない私たちは有名人の写真なんて使えない」なんて言わないでくださいね。皆さんの周りには“有名人”写真があふれています。図書館だよりの読者にとって、先生や生徒は超人気タレント並の知名度ですよ。“読者”の多くが知っている“有名人”の写真を無料で使えるなんて私たちからしたら羨ましい限り! せっかくですから個人情報の取扱には注意をしつつも、効果的に使いましょう。

とはいえ、たくさん載せればいいのではありません。これぞ!という一枚を厳選してください。選ぶ際は、その写真が何を伝えようとしているのか、一言で表してみてください。表せない写真は載せない。同じような一言になってしまう写真は思い切って削りましょう。



8.図書館だよりが人生を変える


見出し、導入の一文、写真、ここまで真剣に選べば、もう完成したも同じです。本文は自由でいいと思いますが、最後に一ついいコツをお伝えします。

「絶対に読まなそうな一人ないし数名を具体的に思い浮かべて、その子に向けて書く」というものです。その子に絶対に読ませてやる! 楽しませてやる! 記憶に刻み込んでやる! そんな意気込みで一文一文を書いてみてください。

その結果、特定の一人ないしグループが読むようになるかは保証できません。でも、それだけ頭を振り絞って作った図書館だよりは、絶対に誰か、面白がってくる子が出てきます。

「正しいことを伝えますから、ちゃんと読みなさいね」オーラが、子どもたちを遠ざけるのと同様、「絶対に子どもたちの目を釘付けにする面白いもの作ったる!」オーラも確実に匂い立ち、アンテナの高い子を惹きつけます。

その子はもしかしたら、10年後、20年後、あなたの図書館だよりを思い出してプッと吹き出すかもしれません。そして、当時を思い出して、じんわりと胸の奥が熱くなり、仕事や子育てにいつもより少し頑張るかもしれません。

これまで存在すらしなかった図書館だよりが、誰か一人の人生を変える可能性を持つと、信じています。


(以上、 『学校図書館』2012年12月号より再掲載させていただきました)