小学生限定の新人公募文学賞「12歳の文学賞」から生まれた
『12歳の文学』の電子書籍が
Appleが選ぶiTunesの【iBooks Best of 2015 】に選出されました!



僕が編集に直接関わった電子書籍ではないのですが、
自分が立ち上げた企画から生まれたものが、Appleに選んでもらえたというのは、本当に嬉しいです。

立ち上げたのが2006年、
(立ち上げ時の記者会見の模様はこちらです。
上戸彩、「私が読んで賞をあげちゃう!」 | ORICON STYLE )
上戸彩12歳3

それから2010年の第五回募集まで担当して、以降は担当を譲りました。
なので、結構長らく「12歳の文学賞」からは離れているわけですが、
腹を痛めて生み育てた子は、手を離れた後も可愛いものです。

(12歳の文学賞については、
告知ページや、
僕がかつて書いていたブログ12歳の文学賞ブログ すごいぞ、日本の小学生
をご覧ください)

12歳の文学賞も、めでたく10歳になりました。

そんな記念の年に、Appleが選ぶ「ベスト」に選ばれるというのは光栄なことです。
iBooks Best of 2015・pic05756

(個人的には、10周年よりも、12周年こそ大事と思っていますが。
なにしろ、「12歳」の文学賞なので^_^ )


■紙の本の出版を熱望する声も

その一方で、第九回受賞作から、紙の本として出版されなくなったことを悲しむ声もありました。

Twitterでブレイクして、タレントとしても活躍している
はるかぜちゃん、こと春名風花さん(@harukazechan
の一連のツイート(2015年3月29日)です。

12歳の文学賞のことにとどまらず、
子どもの創作力、表現、といったことを考える際においても、非常に示唆に富む内容なので、
以下に引用させてもらいます。

ふうかことはるかぜちゃんが楽しみにしている『12歳の文学賞』の本が、今年は紙の本ではなく、電子書籍になるそうです。たぶん紙の本は、昔ほど売れないからじゃないのかな


12歳の文学賞は、本や、書くことが好きな子どもたちのための賞です。そして、彼らの中には、電子書籍を閲覧できない環境にある子もたくさんいると思います。

いくら時代が進んで、みんながネットを使うようになったとは言っても、すべての家にスマホやパソコンがあるわけではありません。


電子化でたくさんの人に気軽に読んでもらえるようになるのはいいけど、肝心の子どもたちは電子化で本を読めなくなる事の方が多いと思います。
なぜならまだネットは子どもにとって危険なモノとされていて、教育に関心の高いおうちほど、子どもにパソコンやスマホを自由に使わせる頻度が低いからです。


パソコンを使わせてもらえても、親の目の前で「親と一緒に閲覧すること」をルールにしていたり。
わたしのまわりだけかもしれないけれど、本が好きなおうちは子どもの目に触れる文章にも敏感で、悪いものも良いものも入り乱れるネットを、子どもの目から遠ざけていることが多いな、と感じます。


そうでなくても、親の目の前でする読書はつまらない。本は1人で、1人の部屋で、いつでも手に取って読めるのが楽しいに決まってる。本が好きな子どもにとって、自由に自分の部屋で、人目や、時間を気にせず読めるのは、やっぱり紙の本なのです。


それに往々にして想像・創造は、満たされた環境より、『何か足りない環境』から生まれるもの。パソコンやスマホを持たない子の中に、よいものを書く子もたくさんいるんじゃないかな

そして、ここから、
「小学生が物語を書く」
ということの価値、
そして、「その物語を受け取る子どもたち」
にとっての意義について綴られていきます。

小学生のころ12歳の文学賞をみて、とてもわたしはあんなの書けない!とショックも受けたけれど、心を動かすものを書くのに年齢は関係ないんだなとか、今のわたしたちだからこそ書けるモノや見える世界があるのだから、自分もなるべく今の気持ちを書き残したいなとか、いろいろな事を考えました


わたしが『はるかぜちゃんのしっぽ(ω)』を出した時、ただの子どもの日常のツイートを本にしてもらうのはとっても恥ずかしかったけれど、秀れた文章ではなくても、10歳の今しか見えない景色を形にしておくのもいいかなと思い、引き受けました。


結果、中学生になった今、読み返すと恥ずかしいことばかりで、読むと顔が大火事になるんだけれど、それでもやはり『この感じ方や真っ直ぐな気持ち、ものの見方は、今の自分には絶対にない。』と、小さい頃の自分に頭を下げる部分もたくさんあり、紙の本で残してもらえて、本当に良かったなと思います


子ども時代、特に小学校の6年間は、人間がからだも心も、一番大きく変化する時。
わたしみたいなただの小学生のツイートからでさえ、二度と戻らない感覚を感じることが出来る。
書くことが好きな子たちが綴る文学賞受賞作品には、もっと細やかに、二度と戻らない大切な気持ちが、たくさん詰まっています


子どもが書いた子どもの本を、大人が『懐かしいなー』と、ほほえましく読むのではなく、ぜひたくさんの子どもたちに、同年代でいる間に、『そうそう!そうだよね!』と、共感して読んで欲しい!
それには、いつでも子どもが自由にひとりで手に取れる紙の本であることが、わたしは重要だと思います。


わたしが小学生の時に読んだ『12歳の文学賞』は、等身大の自分たちの姿でした。
自分が思ってもうまく言葉に出来ない日常、面白かったこと、想像したこと、悲しかったことを、サラッと文章にすることができる同年代たちは、キラキラして、とてもカッコ良かった



『12歳の文学賞』今年の受賞作はいつにも増して面白かったので、紙の本になって、いろんな学校の学級文庫に置けない形になったのが、とても残念です。
誰にどこに言えばいいかわからないけれど、どうかまた、紙の本になりますように!!!

(上記のツイートは、togetterに
どうかまた紙の本になりますように「12歳の文学賞」
としてまとまってます)



こんなふうに熱い想いを感じてくれていたなんて、本当にありがたいです。

「小説なんて大人が書くもの」
「作文が苦手な私は、文章を書く能力がない…」
といった大きな勘違いがまかり通っていて、
しかも、
その誤解をとくどころか、ますます強化してしまう人や仕組みがあちらこちらに散らばっている。

そんな状態を変えたいと、
「12歳の文学賞」を立ち上げたのが10年前。
前例がないことを始めるのは実に大変だったのですが、
やっておいて本当によかった
間違いじゃなかった
と、つくづく感じています。



■かつて立ち上げた企画が花開く年

この他にも、今年は、
「かつて自分が立ち上げて、今は、他の人の手にバトンが渡っているもの」
が花開くことの多い年だったように感じています。

5年前に企画した『アンパンマン育脳ドリル』が重版に重版を重ね、めでたく10刷に。10万部も目前! 



続編も出ました↓
『もっと!アンパンマン 育脳ドリル』



やはり、「読者の喜びに寄与できた実感のある作品」、
「関わったことを誇りに思える仕事」をしっかりとしていきたい
そんな「編集者の原点」ともいえる想いを再確認した年でもありました。

良いお年をお迎えください!